近刊案内
2024年11月20日
12月以降の近刊
いま読む! 名著
家族ゲームの世紀
夏目漱石『明暗』を読み直す
12月上旬発売予定
飯田祐子 著
四六判上製 216頁
定価2200円+税
ISBN978-4-7684-1023-3
いま! の問題意識で名著を読み直すシリーズの23 巻目は、夏目漱石晩年の作品『明暗』を取り上げる。
テーマは「家族」。漱石は、急速に変化していく社会と、それに急かされていく私的領域との軋轢が最も顕著に表れる「家族」には常に注意を注ぎ続け、『坊ちゃん』『それから』『こころ』などの代表作で常に触れてきた。その流れの最後の作品である『明暗』。漱石研究を専門に置きつつ、フェミニズム、結婚、家庭などへの論評、著作を多く執筆している飯田祐子氏が、変質していく「家族のありかた」を、明治期の漱石の視点をベースに置きながら考察。「家族を作り、維持していく」ことの複雑さ、難しさ、そこで生じる問題点は時代を超える。
【著者紹介】
飯田祐子(いいだ・ゆうこ)
1966 年、愛知県生まれ。名古屋大学大学院文学研究科、博士(文学)。現在、名古屋大学大学院人文学研究科教授。専門は、日本近現代文化・文学、ジェンダー批評。
著書『彼女たちの文学 語りにくさと読まれること』(名古屋大学出版会)、『彼らの物語 日本近代文学とジェンダー』など。
【主な目次】
序 章 日本近代のハイブリディティ
第1章 「家族」という劇場
第2章 言葉とジェンダー構造
第3章 男性性と「金」
第4章 お延「愛」
第5章 七つの三角形
終 章 明暗の家族ゲーム
究極Q太郎詩集 散歩依存症
12月中旬発売予定
究極Q太郎 著
A5判変型上製 264頁
定価2800円+税
ISBN978-4-7684-5970-6
無力さという重力を担ぎ 歩け、歩け、歩け――。
八方塞がりの中にあるのは 私か、あるいは世界か。
「飲酒欲求をなんとか紛らせようとして歩きはじめたのだったが、それは身体に気を遣おうなどという、前向きな健康的な理由からではなく、度々起こしていたすんでのところのボヤ騒ぎをこれ以上繰り返すまいと思ったためだった」
介助者、アナキスト、詩人……。究極Q太郎さんにはこのような貌(かお)がある。
19歳、浪人時代に飯島詭理(いいじま・きり)名義で「第24回現代詩手帖賞」を受賞。が、その後、大学ではノンセクト運動と介助者としての生活を送る(その後退学)。
介助者としては、金井康治さんや新田勲さんの介助にも入り、機関誌『タビットソン』(金井康治命名)の編集に参加したり、「グループもぐら」の活動に参加して機関誌『グループもぐら』通信の編集に加わる。そして、『現代思想 特集=身体障害者』(1998年2月号)の編集にもたずさわった。
アナキスト界隈では、「3A(スリーA)の会」に加わり機関誌『Actual Action』に参加したり、『Anarchist independent Review』にも参加した。
その間、早稲田に交流スペース〈あかね〉を立ち上げ、詩作との距離は都度、広がったり縮んだり。ミニコミ詩集を作品の主な発表の場としてきた。
本書『散歩依存症』は、究極Q太郎という人が、アルコールとの関係がのっぴきならないものになったとき、華麗に依存対象を「散歩」に置き換えたことに端を発して書かれた「詩」の塊である。
しかし問題は散歩の中身のほうで、このような具合なのだ。
「仕事の帰り道四時間かけ、休みの日には最大一日十時間も歩くようになっていた。毎日毎日、『雨ニモマケズ』のように。体に負荷をかけると、そのことに気をとられ、いらぬことを思う余力が削がれると信じ、両肩に重い荷物を担ぎ、坂道や階段、歩道橋に出遭えば登る、そしていらぬことが心に浮かびそうになったらそれを振り払うように思い切り歌をうたう。(略)
いつしか私は、変性意識状態に入っていた。十時間歩いても全く疲れず、全てがクレイアニメのように見えるようになったのである」
「私が散歩するうちに見いだした「極意」に、「この道は通り抜けられないだろう」と見える路地にあえて入っていくというものがある。本当に抜けられなければ戻ればいい」(いずれも本書「あとがき」より)
こうして路地へ、狭いほうへと向かう足取り。まるで迷うために、八方塞がりになるための散歩? ミラクルへと反転するための助走?
もしかするとこの詩を読んでいるひとは、「この詩人は狂っているのではないか」という想いを、一度はいだくかもしれない。だが、詩人の散歩はそれを反転させるものなのだ。
本書には「にしこく挽歌」「散歩依存症」「ガザの上にも月はのぼる」ほか、39篇を所収。写真とドローイング、詳細な年譜も付した。
【著者紹介】
究極Q太郎(きゅうきょく・きゅうたろう)
1967年生まれ、埼玉県出身。
詩人、介助者、アナキスト。
1986年、19歳のときに飯島詭理名義で第24回現代詩手帖賞を受賞。明治大学文学部中退。その後、脳性麻痺等の身体障害者介助に就く。
以降、『Anarchist independent Review』『新しい天使』などの発刊にたずさわりつつ、自身の詩をミニコミとして「詩アレルギー詩集」「おれたち愚劣な俗物」など多数刊行。
1998年、早稲田に交流スペース〈あかね〉をオープン。「だめ連」と行動をともにする。
『現代思想』『ユリイカ』等に、障害者問題や詩論などを多数寄稿。
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リプロダクティブ・ジャスティス
引き裂かれる性と生殖の権利
2025年2月上旬発売予定
一般社団法人ふぇみ・ゼミ&カフェ 編
A5判並製 208頁
予価2000円+税
ISBN978-4-7684-5957-7
一般社団法人ふぇみ・ゼミ&カフェが2022年に開催した連続講座「引き裂かれる性と生殖の権利」の講演録を加筆・修正し、新たな内容を加えて書籍化。
「リプロダクティブ・ジャスティス=性と生殖の正義と公正」は、90 年代からアメリカの黒人フェミニストやセクシュアリティが掲げてきた。性と生殖の権利を語る時、例えば貧困層や移民、人種的マイノリティの女性たちの権利は周縁に追いやられ、そこにはジェンダー以外にも様々な差別があることを見落としてはならないというインターセクショナリティ(差別の交差性)の指摘であり、@子どもを持たない権利、A子どもを持つ権利、B安全で健康な環境で、子どもの親になる権利を要求してきた。さらにセクシュアル・マイノリティやセックスワーカーの経験から性的自己決定権及びジェンダーの自由も重要だとされる。これまでの議論の中で見落とされ、「つけ加え」として扱われてきた人たちの経験から、日本で生きる私たちにとってのリプロダクティブ・ジャスティスを問い返すものである。
【著者紹介】
ジェンダーと多様性についての一般向け講座を開催する「ふぇみ・ゼミ」(2017年設立) と、ジェンダーと様々なテーマをつなぐアート&カルチャーの公演やイベントを開催する 「ゆる・ふぇみカフェ」(2014年設立)が共同で設立した非営利型一般社団法人。 差別の交差性(インターセクショナリティ)の視点に立って、@講座、公演、展示などの企画・開催A若い世代の研究者、アクティビスト、アーティストの育成B調査研究と提言活動などを行っている。