近刊案内
2025年10月7日
10月以降の近刊
季刊 福祉労働178号
【特集】生存権の現在地―― 「いのちのとりで裁判」を振り返る
10月25日発売予定
福祉労働編集委員間 編
A5判並製 148頁
定価1400円+税
ISBN978-4-7684-2378-3
2013 年から2015 年にかけて行われた、生活保護基準額過去最大の引き下げ。前年、政権に返り咲いた自民党の意向に沿うように、適切な手続きや根拠を欠いたまま強引に行われました。この引き下げをめぐり、全国で1027 名が提訴。この一連の訴訟が「いのちのとりで裁判」です。そもそも生活保護は、十分に「健康で文化的な生活」を支えてきたのか。文化的な生活とはなんなのか。原告の言葉の端々から、こうした問いが見えてきます。この国の「生存権の現在地」を、読者の皆さまといっしょに考えたいと思います。
【ミニレポート】「津久井やまゆり園事件」と向き合う
作家がスターだった時代
文春文士劇の45 年
11月上旬発売予定
道又 力 著
四六判並製 240頁
予価2200円+税
ISBN978-4-7684-5984-3
作家が演じる素人芝居「文士劇」。その嚆矢は、明治前半の文壇をリードした尾崎紅葉率いる硯友社によるもので、130 年以上もの歴史がある。その文士劇が、近頃復活の兆しを見せている。昨年、関西・九州在住の作家が中心となり、大阪で東野圭吾原作「放課後」を上演。今年12 月には、盛岡文士劇が30 回目を迎える( 演目は、横溝正史原作「犬神家の一族」)。そして来年5 月には、日本文藝家協会が創立100 周年を記念して文士劇を行う。
本書では、昭和9 年に始まり、戦争での中断を挟んで昭和53 年まで続いた文藝春秋主催「文春文士劇」の全容と作家たちの真剣なドタバタを余すところなく伝える。
菊地寛、三島由紀夫、石原慎太郎、遠藤周作、松本清張、五木寛之、井上ひさし、
瀬戸内寂聴、筒井康隆、中上健次、村上龍……みんな出演した文士劇が令和に甦る!
一人娘
11月下旬発売予定
グアダルーペ・ネッテル 著/宇野和美 訳
四六判上製 272頁
予価2800円+税
ISBN978-4-7684-5983-6
語り手の私(ラウラ)とアリナは親友で、20代のころはお互いに「子どもは産まない」と誓い合った仲だった。その意志をかたくなに貫く私とは裏腹に、アリナは結婚し、やがて子ども(イネス)を身ごもる。そんななか、ラウラはアパートの隣に暮らす母子家庭の男の子とだんだん交流を深めていく。男の子は感情をコントロールるすことが苦手で、衝動的な暴力を母親にぶつけがち。母親は子どもを育てていく自信を失い、故郷の妹に預けることを考えている。やがてイネスが生まれるが、イネスには生まれついて重度の障害があり明日を生きる保証もない状態だった。イネスの誕生と男の子との交流を通じ、登場人物たちの気持ちは揺れ動き、本人がそれまで思いもしなかった自らの気持ちに気づかされていく。イネスの生命や母という宿命、女として生きることの葛藤……。だが、物語は思わぬ形で最後を迎えることになる。
2023年ブッカー賞最終候補作。
グアダルーペ・ネッテル、待望の長編小説!
リプロダクティブ・ジャスティス
引き裂かれる性と生殖の権利
2025年12月上旬発売予定
一般社団法人ふぇみ・ゼミ&カフェ 編
A5判並製 208頁
予価2000円+税
ISBN978-4-7684-5957-7
一般社団法人ふぇみ・ゼミ&カフェが2022年に開催した連続講座「引き裂かれる性と生殖の権利」の講演録を加筆・修正し、新たな内容を加えて書籍化。
「リプロダクティブ・ジャスティス=性と生殖の正義と公正」は、90 年代からアメリカの黒人フェミニストやセクシュアリティが掲げてきた。性と生殖の権利を語る時、例えば貧困層や移民、人種的マイノリティの女性たちの権利は周縁に追いやられ、そこにはジェンダー以外にも様々な差別があることを見落としてはならないというインターセクショナリティ(差別の交差性)の指摘であり、@子どもを持たない権利、A子どもを持つ権利、B安全で健康な環境で、子どもの親になる権利を要求してきた。さらにセクシュアル・マイノリティやセックスワーカーの経験から性的自己決定権及びジェンダーの自由も重要だとされる。これまでの議論の中で見落とされ、「つけ加え」として扱われてきた人たちの経験から、日本で生きる私たちにとってのリプロダクティブ・ジャスティスを問い返すものである。
【著者紹介】
ジェンダーと多様性についての一般向け講座を開催する「ふぇみ・ゼミ」(2017年設立) と、ジェンダーと様々なテーマをつなぐアート&カルチャーの公演やイベントを開催する 「ゆる・ふぇみカフェ」(2014年設立)が共同で設立した非営利型一般社団法人。 差別の交差性(インターセクショナリティ)の視点に立って、@講座、公演、展示などの企画・開催A若い世代の研究者、アクティビスト、アーティストの育成B調査研究と提言活動などを行っている。