現代書館

 他にも、飯塚市の旧炭鉱住宅や田川市の田川井田駅で撮影されたシーンなどに触発されて、現代書館の創業間もない頃(1968年)に刊行された『炭鉱(ヤマ)本橋成一写真集』(第5回太陽賞受賞作)を久しぶりに開いてみました。同写真集の見開きページに笑顔で写る少年の衝撃的な最期に触れた「あとがき」の後半で、本橋成一さんは次のように記します(1992年発行の第2版)。「ぼくが初めて筑豊に行ったのは1965年。もう四半世紀がすぎてしまった。石炭から石油、そして原子力へ。鼻先に"豊かさ"という人参をぶらさげられて経済発展、近代国家へつき進んだ四半世紀でもある。いまぼくは1986年4月、大事故を起こしたチェルノブイリ原発の写真を写している。あらためて『炭鉱』のページをめくっていると、いま写しているチェルノブイリの写真と同じにみえてくる。後藤静夫や宮島重信さんたちが負ったようにいつも誰かが心と、肉体を犠牲にして幻の"豊かさ"を負わされている。」
 大量棄民政策の成れの果てというべき福島第一原発事故を経験したこの国が、新たなエネルギー政策を検討する際に、決して無視してはならない写真と言葉、そして歴史がこの1冊の写真集から立ち上ってきます。改めて、既刊本には時代を越えて発信力を持ち続ける可能性が秘められていると認識することができました。(よもや『男はつらいよ』がきっかけになってくれるとは思いもしませんでしたが)

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