営業部だより
2012年04月26日
【既刊本めざまし 3】 三浦しをんさんも愛読! 小関智弘さんが描く「働くこと」
今年の本屋大賞に三浦しをんさんの『舟を編む』が選ばれたというニュースに接し、ふと数年前に目にした新聞記事のことを思い出しました。その記事、2009年11月29日付の日本経済新聞・読書欄「半歩遅れの読書術」では、三浦しをんさんが「職業を題材にした本」を数点紹介されています。『新潮日本語漢字辞典』の編纂者・小駒勝美氏が辞書づくりの経験を踏まえ、漢字の日本式改良について解説した『漢字は日本語である』が取り上げられていて、この度の受賞作(物語の舞台は辞書の編集部)を執筆される際に資料として読まれたのだろうかと想像しました。
同記事で三浦さんは、現代書館からも6点の著作がある(1点は品切れ)小関智弘さんの『春は鉄までが匂った』(ちくま文庫)にも触れ、「瑞々しい描写を通し、町やひとのぬくもりと匂いまでもが伝わってくる好著だ」と評しています。小関さんといえば町工場の旋盤工として働きながら芥川賞や直木賞にノミネートされた(小説家の佐伯一麦氏も小関さんの『羽田浦地図』を「芥川賞を取らなかった名作」のひとつに数えています)作家として知られていますが、その「働きながら書く」ことを意識し続ける姿勢には胸を打たれます。50年以上前に小関さん夫妻と町工場の仲間ら4人で始めた読書会が現在も開かれていること(2009年10月27日付の朝日新聞で大きく紹介されました)が示すように、その人生は「働きながら読む」日々でもあります(その読書会は「塩分読書会」と呼ばれ、「塩分」には“労働者にとって不可欠なもの”という意味が込められているそうです)。
『羽田浦地図』がテレビドラマ化された際に、主演の故緒形拳氏(撮影の合間には小関さんと一緒に工場の外で日向ぼっこされていたとか)から原作本へのサインを頼まれ、「働くことと暮らすことが同義語な人たち」と書き記した小関さん。考えてみると、現代書館の本にも「働くこと」や「職業」に関わるものがとても多いことに気付きます。奇しくも(?)この拙文を書いている4月24日は今年初の夏日となりました。改めて「自分の仕事」と「現代書館の本」を見つめ直すためにも、先ず今夜は小関さんの担当編集者・M氏と良く冷えた生ビールを片手に大いに語り合ってまいります!