編集部だより
2010年04月26日
かい人21面相が帰ってきました!
現代書館が小説を出しました。タイトルは『帰ってきた かい人21面相』です。著者の小笠原和彦氏は、ユニークな体験をもとに素晴らしいノンフィクションを手掛けてきた方で、小社からも『少年「犯罪」シンドローム』『ニッポン人、元気ですか!』『霊園はワンダーランド』『学校はパラダイス』『出口のない家』が刊行されています。
小笠原氏にとっても小説デビュー作の本書、内容は……読んでのお楽しみですが、ちょこっとだけ――。
冒頭の風景は、年末日比谷公園の炊き出し……といえば、誰しもが「あの村」を連想するでしょう。主人公の久保寺圭一(無職)は配られた食料を貪りながら、就労支援のテントに向かい、そこで「キツネ目」で関西弁の就職相談員と出会います。彼の指定した34番のテントで待っていたのは4人の男女。選出の理由も分らぬまま、いつの間にか経団連会長誘拐という計画に引き込まれていきます。会長の身代金として狙いを付けたのは、某巨大自動車企業の内部留保の1割、その額なんと3兆円! 報酬目当てに犯罪に加担する久保寺ですが、思いのほか犯罪って難しい……。アイデアを出し合いながら、地道な手作りで犯行に及んでいきます。こんなんで、ホントにうまくいくの!?
体面優先で動きの鈍い警察、牽制しあう企業取締役、漢字の読めない首相……? 荒唐無稽なフィクションでありながら、ちらほらとリアルな世界が垣間見えてきます。「あの事件」から25年、甦ったかい人21面相が平成不況を覆すべく、ジリ貧メンバーを率いて社会に挑む、「今こそ」の痛快悪漢小説(ピカレスク)!
――さて、小説からは脱線しますが、私はギリギリ「キツネ目の男」の顔と「グリコ森永事件」がつながる年代です。幼い頃に「グリコと森永のお菓子は『どくいりきけんたべたらしぬで』だから買ってあげない」と親に言われて、犯人を憎んだ覚えがあります。この本を作ってみてわかったのは、意外とこの顔を知らない方がたくさんいるということです。ちなみに私と2歳しか違わない某社営業さんには「3億円事件の人でしたっけー」と言われてしまいました。チガウチガウ。それはヘルメットかぶった人ですね。
自分の子どもの頃なんて「すこーし前」だと思っていたけれど、25年以上前だから結構昔です。まだ岩倉具視の500円札があったと思います。平成ベビーにも新世紀チルドレンにもわかりませんね。
稚拙なままでも歳だけはとるものなんだなー、と実感した今日この頃です。(香)