編集部だより
2011年02月19日
暴かれた真実 NHK番組改ざん事件――女性国際戦犯法廷と政治介入――
「昭和天皇有罪、日本政府に国家責任」
2001年1月30日、日本軍性奴隷制を裁いた歴史的判決が、特集番組から抹消された。
10年前の2001年1月30日NHKのETVシリーズ2001「戦争をどう裁くか」第二夜「問われる戦時性暴力」は、政治介入による改変の結果4分も尺の足りない状態で放映された前代未聞の番組でした。
この番組改変事件をめぐり、番組の取材対象である「女性国際戦犯法廷」を主催したVAWW-NETジャパンは、NHKとNEP(エンタープライズ)、制作会社のDJ(ドキュメンタリージャパン)を01年に提訴。人権と名誉をかけ、7年にわたり裁判を闘いました。07年高裁では勝訴したものの、08年最高裁ではそれまでの論点と責任を回避する不当な判決が下されてしまいました。こうして人権と名誉が「権力の都合」に踏みにじられてしまったのです。
事件から10年目、この事件・裁判をめぐって発言をしてきた原告VAWW-NETジャパン、制作側のNHK職員、研究者ら22名による、さまざまな角度からの見解と知られざる後日談を収録した判決評価集『暴かれた真実 NHK番組改ざん事件』が完成しました。
被害者元慰安婦のおばあさん達や、加害者元日本兵のおじいさん達は、当時味わった苦しさ、沈黙を貫いてきた年月の苦しさ、真実を打ち明ける苦しさを背負いながら声をあげました。真実が何であったか、それを伝え知らせるために立ちあがりました。その証言こそが、直前にカットされ隠蔽されてしまったのです。
表現の自由はメディアにだけ許された特権なのか? なぜ「慰安婦」問題の加害の歴史に向き合えないのか? 日本社会やメディアを根本から問い直す画期的な1冊です。
表現について、報道について、大メディアについて、戦争について、暴力について、平和について――。どの視線でお読みいただいても大きな収穫があります。ぜひご高覧下さい。(明)
【目次】
第1章 NHK裁判をふり返る――原告から――
人間の生きざまを問うたNHK番組改ざん裁判(西野瑠美子)
私にとってのNHK裁判(東海林路得子)
NHK裁判を闘って(田場祥子)
マスメディアと市民運動のはざまで(池田恵理子)
最高裁判決は間違っている(飯田正剛)
「女性国際戦犯法廷」裁判を振り返って(大沼和子)
取材対象者の期待と信頼の保護に関する最高裁と東京高裁の判断(緑川由香)
NHK番組改変事件高裁判決における内部的自由に関する問いかけ(日隅一雄)
法律実務家の観点から、最高裁と高裁判決を比較検討する(中村秀一)
第2章 改変ドキュメント
消された裁きとフェミニズム(米山リサ)
コラム 女性国際戦犯法廷とは何だったのか(金 富子)
真相究明と責任追及(板垣竜太)
第3章 その時、何があったのか?
ETV2001改変事件は私たちに何を問うているのか(永田浩三)
第4章 判決・裁判をどうみるか?
「NHK番組改変事件」は終わっていない(松田 浩)
ETV番組改変裁判で考えたこと(原 寿雄)
朝日新聞の劣化を憂う(柴田鉄治)
NHK番組改変問題と表現の自由(田島泰彦)
NHK番組改変問題で問われたもの(野中章弘)
事実を埋もれさせてはならない(戸崎賢二)
残る疑問(小滝一志)
最高裁のNHK裁判を批判する(奥平康弘)
「表現の自由」とは何か?(皆川 学)