宝塚歌劇団が、今年ついに100周年を迎えました。4月には100周年記念イベントが開催され国内はもちろんのこと、外国のファンからも注目されました。
100年の歴史を刻むだけでも偉業の名に値する凄いことですが、その100年は時間的な厚みだけでなく世界的な激動期に入った極めて困難な一世紀でもありました。エンターテイメントや芸術に携わる人にとっても大変厳しい道のりであったことは想像に難くありません。
1914(大正3)年、宝塚少女歌劇団の初公演の年は第一次世界大戦が勃発しており、その後数年のうちにロシアや中国では革命が起き、世界中が激動の時代を迎えたことは皆様ご存じのとおりです。
戦争・経済恐慌や震災など次々に試練が訪れ、エンターテイメント産業自体もマスメディアの発展、映画やテレビの隆盛によって激変を繰り返しました。その中で生き延びることは並大抵のことではなかったはずです。宝塚が卓越したパフォーマンスを実現し、ファンが熱烈に支えてきたからこそ、これらの時代の荒波を乗り越えてこれたのでしょう。
2014年に新たな世紀への歩みを始めた宝塚は、来年にも台湾公演を控え、国際的な地位もより一層確かなものとなるのは間違いないでしょう。
その宝塚の歴史の困難な歩みについては、国際的な関心が集まっています。
小社で刊行した
『踊る帝国主義──宝塚をめぐるセクシュアルポリティクスと大衆文化』は、ミシガン大学教授の文化人類学者が長年宝塚を研究して書き下ろしたユニークな書籍です。著者はアメリカ人ですが、日本での研究・調査を重ね、日本独自の価値観を表現しているパフォーマンス集団としての宝塚の魅力に迫っています。ちょっと意外かも知れませんが宝塚は学問研究においても世界的に注目される存在になっているのです。
本書では宝塚の成果と歴史を文化人類学の視点から分析し、他の書籍ではけして知ることのできない〈宝塚歌劇団の引力〉を明らかにしています。
女性だけで形成されるドラマの意味とは? そして戦前・戦中の時代に宝塚が経験した〈文化と戦争〉の相克と融和とは?
宝塚もまた、近代日本の夢と理想を表現し希望を描き続けた大衆文化と無縁ではなく、「脱亜入欧」と「興亜」のはざまの中で揺れ動いた営みでもありました。
宝塚と近代日本の100年の歩みと、これからの100年を考えるためのユニークなまなざしを提示しています。
また、より分かり易い本としては
『フォービギナーズ 宝塚』(梅原理子著)があります。本書のイラストを描いたのは元タカラジェンヌの乙原愛さん(星組・娘役出身)です。この機会に是非、ご覧ください。