現在、日本国内は問題山積で、選挙に向けて日々刻々と変わる政治状況に驚いたり、あきれたりですが、この間、遠く欧州でも実は気になる動きが続いております。
その中の一つにスペイン、カタルーニャの独立問題があります。
一つの地域が属している国家から独立を求めて大規模な運動を展開することだけでも十分大事(おおごと)ですが、独立投票をめぐって警官隊と激しくぶつかり合うニュースを見ておりますと、もはやこれは独立運動ではなく「独立戦争」の感すらします。
どんなに地域・地方の問題がこじれても、ここまで大規模な地域独立運動は日本では起きていませんが、それは世界的に見て普通のことなのか? 健全なことなのか? それとも不健全で、かえって良くないことなのか? こんなところでも日本と世界の違いが浮き彫りになっているのではないでしょうか? いずれにしても「中央政府からの独立」という運動を我がこととして真剣に考える機会のない日本ではつい「他人事」(ひとごと)と捉えがちな地域独立問題ですが、地方の不景気や過疎化をよそに、「戦後二番目の景気回復」と平気で口走る日本の政府を見ますと、どこかの地域が独立を検討し始めても、それは世界レベルで見ると意外にも「ふつう」のことなのかも知れません。
スペインはもともと多くの異なる文化が混在し、昔は地域ごとに違う国でもありました。さらに言葉も首都とは違った話し方をし、アイデンティティも地域ごとに異なるそうで……って、日本だってそれはまったく同じじゃありませんか!
うーむ、ここで考えなくてはならないのは、日本スペインの違いではなく、日本とスペインの共通点なのかも知れません。
地域の不平を無視する中央政府に対して人びとはどんな意思表示をするべきで、どんな行動が選択できるのか? それはもう政体や歴史の違いを超越して、民主主義の問題でしょう。いま、イベリア半島で問われているのは地方自治や分権の問題ばかりでなく、民主主義についてなのかも知れません。
小社では、スペイン・カタルーニャ地方の言語と文化について
『小数言語の視点から――カタルーニャ語を軸に』(中嶋茂雄 著)を刊行しております。帯には「スペインの中に、スペイン語では語れないもう一つの文化がある」と記載されております。
国内にある複数の文化を「混乱」と見るか、「豊かさ」と捉えるか?
スペインは遠くにありて想うもの、そして身近に想うべきものなのかも知れません。
この機会に、是非、お手に取られてください。