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3月の初め、出張で金沢に赴きました。我らが営業部長が輩出したこの土地を、レンタサイクルを利用して文字通り縦横無尽に駆け回ってまいりました。部長と係長が長年の実地検分を経て編み出した“日本全国・営業自転車フル活用術”。時に、傍から見れば酔狂と映りかねないルート設計も無いわけではありませんが、慣れというものは凄まじく、全国各地を走り回っているうちに「その酔狂加減こそが“現代書館スタイル”の醍醐味なのだ!」といった心持ちになってくるのです。吉田健一の小説『金沢』の冒頭に「町を流れている犀川と浅野川の二つの川、それに挟まれていて又二つの谷間に分けられてもいるこの町という一つの丘陵地帯、又それを縫っている無数の路地」との記述がありますが、その地形を全身で体感しながら、さらに前頭葉に叩き込むといった風に過ごした、人生初の金沢滞在でありました。
見知らぬ土地での心許なさを毎回軽減してくれるのは、やはり書店担当者さんの笑顔ですが、もうひとつは小社営業部長お手製の手書き地図。これは本当に優れもの!小さな紙片に、目的地とそこに到達するために必要なポイントのみが記されたシンプルなものですが、これさえ携えておけば初めての土地でもまず迷うことはありません。彼は日本中至る所の地図をなんと空で書いてしまえるのです。まったく身近なところに特異な才能の持ち主がいるものですね。
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