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カウンセリング・幻想と現実 下巻 生活と臨床 |
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カウンセリングが大衆化現象をみせている中、カウンセリングの思想と技法に疑問と批判を提起し、そこから現代社会を考えようとする立場から本書は生まれた。 下巻は学校、病院、地域医療、企業、教育の場など社会の各領域でカウンセリングはどのように機能しているのか、そこでの生活にどのような問題を引き起こしているのかを考察する。 【目次】 第一部 医療・管理とカウンセリング ・病院精神医療とカウンセリング ・地域精神医療とカウンセリング ・職場のメンタルヘルス対策とカウンセリング ・阪神淡路大震災/PTSD/心のケア 第二部 子ども・若者・学校とカウンセリング ・児童相談現場とカウンセリング ・学校現場とカウンセリング ・相談室という場とカウンセリング ・臨床的営為とカウンセリング 第三部 解放・自立論とカウンセリング ・女性とフェミニストカウンセリング ・ピア・カウンセリングを考える 「心のケア」への疑問 社会臨床学会論文集が提起 「心のケア」という言葉が盛んに聞かれるようになったのは、阪神大震災の頃からだろうか。最近では何か事件がおきるたびにこの言葉が新聞紙上に登場する。いじめや不登校の問題と関連してスクールカウンセラー派遣事業も拡大、カウンセラーを志望する若者も増えているといわれる。 日本社会臨床学会による論文集『カウンセリング・幻想と現実』(上下巻・現代書館)がそんな現代社会を「心の管理化・商品化」ととらえ、疑問を投げかけている。 同学会は「臨床心理士」の国家資格かに反対する人たちが、賛成の立場をとった日本臨床心理学会から分かれて1993年に設立された。 小沢牧子氏は自分のカウンセリング経験から「怒りの納め場を無難なものに変える道具」と分析。「人間の生活状況を地道に変革する力を弱める」「社会の問題を、個人の心の問題へと閉じ込める」と批判する。子どもに関する事件が起きるたびに「心のサインを見逃すな」言われるが、児童相談にかかわっている三浦高志氏は「不審児探し」になりかねない、と懸念する。大野光彦氏は、阪神大震災での「心のケア」が被災者に役立ったのかと問う。石川准氏は「感情労働者」としてのカウンセラー自身の負担を論じる。 女性解放運動や障害者の自立生活運動の中から、専門家によるカウンセリングを否定しつつ生まれた「フェミニストカウンセリング」、障害者自身がカウンセラーとなる[ピアカウンセリング(PC)]にも批判は向けられる。「カウンセリングはマインドコントロールとは違うのか」(佐藤みどり氏)。学会代表の篠原睦治氏は 「(PCが依拠する)『障害者の自立』へのこだわりが、健常者社会への適応という矛盾を引き受けさせられることにならないか」と[自己決定]を重視する風潮をも疑問視する。 では私たちはどうすればいいのか。井上芳保氏は「心の専門家」に頼るのではなく「日常的なごくあたりまえの関係性を取り戻す」ことを提案する。篠原氏も学校での対応について「教師と生徒,生徒同士の関係から出発するべきだ」と話す。 「心の専門家」からの応答を読みたいところだ。 (朝日新聞3月16日夕刊) |
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