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英会話どうする? |
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河合塾のカリスマ講師が書き下ろした英語学習論。「英語難民」のための自己チェック法、最も効果的な学習法、忙しい人・お金のない人のための勉強法、LとRの発音の違いが分かる方法等。高校生から社会人まで英語を学ぶ人必読のユーモアあふれる面白学習案内。 [著者紹介・編集担当者より] 目からウロコが落ちる画期的な学習法が満載。著者の体験を交えたユーモアあふれる文を読むうちに、英語のコツが分かります。さすが毎年何万人の生徒を導いている河合塾の先生です。英語は勉強法さえ分かればけして難しくはないのです。(吉) はじめに 電車のなかでアメリカ人とおぼしき女性がいきなり早口の英語であなたに話しかけてきました。 ン? ここは「ふれあいの広場」だっけ? あなたはあたりを見回し、余裕の自己演出をします。と、早くも目という目があなたに注がれているではありませんか。 ウッ。瞬間、ワシは舞いあがった。 あなたにはまだ若干の余裕が残されているようです。『鷲は舞い降りた』(ジャック・ヒギンズ)をもじれるくらいですから。 しかし、電車の振動を頭の奥で感じながら、あなたの目はだんだん死んだ魚のようになっていきます。 しびれを切らした金髪碧眼の美女が、また何かしゃべってきました。 後半がわからない。いや、前半もわかりませんでした……。 衆人環視のなか、車のヘッドライトを当てられたシカのように佇むあなた。顔が徐々に上気してくるのが自分でもわかります。動悸亢進。 まわりの人たちは、「お手並み拝見」という目、耳、肩、背中、横顔、後頭部をしています。 じわじわと緊張に支配されるあなた。孤立無援の宙吊り地獄。 かろうじて浮かべた笑みと、タービンのように高速で空回りする頭。 何か返答せねば。でも、どうしても英語がでてこない。 困惑。そして焦燥。全身に冷や汗が噴きだしてきます。じりじりと後ずさりするあなた。 周囲の人間に笑われていると思いながら威厳を保つのは案外難しい。それにしても「恥をかきたくない」というこの気持ちは何だろう。あなたは漠然とそんなことを考えます。 えーと、えーと。 メThatユs O.K.モ(ま、いいです) 「ザッツ・オーケー」って、ガイジンさん! 当事者能力を失ったあなたは、意味不明の笑みを浮かべて、その場をやりすごそうとします。 すがるようにして、傍らにいるデートの相手に目をやると、彼女も明らかにショックをうけた様子。さっきまであんなに快活だったのに。 「あたし、重い物がもてるとか、英語ができるとか、そういう実用的な男の人が好きなの。ゴメンね」 教訓。女は、嫌いになった男に対してはとことん残酷になれる生き物である。 ……あのう誰か、とりあえず心温まる慰めと冷たい飲み物を。 やっと人心地がついたあなたは、ストア派の哲人のような顔で、さきほどの出来事について考えます。 二十一世紀に生きる日本男児は英会話ができないといけないのだろうか。「英会話をやらない」という選択はゆるされないのであろうか。男はつらいよ(Itユs tough being a man.)。 そんな言葉が頭をよぎるものの、恥をかき、情けない思いをしたことは、どうしても払拭しきれません。このいわれなき劣等感。 自己嫌悪の嵐が吹き荒れるその夜、アルコールに後押しをされるかたちで、あなたは英会話の世界へ足を踏み入れる決心をします。 翌日、あなたは英会話のお手軽本をはや手にしています。 ペラペラとめくってみると、そこには「ラクラク」「簡単」「ペラペラ」「飛躍的」「グングン」などの文字が大書きされています。「学校英語は忘れろ」「文法はやってはいけない」「習うより慣れろ」など、自信たっぷりの謳い文句も目に入ります。まえがきを読んでみると、「英語をシャワーのように浴びれば、あら不思議、いつのまにか英語は身についています」と書かれています。 そうか。コツは「習うより慣れろ」なんだな。でも、地道な努力なしで、ほんとうに英語がペラペラになるのだろうか。あなたはまだ半信半疑です。 しかし、「これまでのどの英会話の本もダメである。本書こそが英会話をものにする最後の指南書となるであろう」とのフレーズを見つけると、あなたはもう小気味よく英語で会話をしている自分の姿を想像してしまいます。 光明、あるやいなや。まあ、とにかくやってみよう。 それから数年後──。 あなたの部屋には数冊の英会話入門書とNHKの英会話テキスト(四月号から七月号まで)が処分される日を待って積まれています。それを眺めながら、 「英会話、どうしようかな……やめようかな」 あなたはお得意の意味不明の笑みを浮かべて呟きます。 * * * ひょっとしたら本書を手にした皆さんのなかにも、この「あなた」と似たような経験をもっている方がいらっしゃるのではないでしょうか。あるいはまた、英語に関するさまざまな不安や疑問を抱いて、悶々とひとりで悩んでいる若きウェルテルもいるのではないでしょうか。 本書は、そうした不安や疑問に立ち向かい、誠実に悩もうと思っている読者のために書かれました。いいたいことは雲霞のごとくありますが、具体的な話は本編に譲るとして、ここでひとつ皆さんに考えていただきたいことがあります。 それは、わたしたちはどうして日本語ができるのかということです。 日本人だからでしょうか。それとも、日本で生まれ育ったからでしょうか。 いずれも違います。 日本語を学習したからです。わたしたちは日本語を学んだから日本語ができるようになったのです。 わたしたち日本人にとっては、日本語はあたりまえのものとなってしまっているため、あたかもまったく学習せずに日本語を習得したかのような錯覚に陥ってしまいがちですが、そうではありません。聞いたり話したりすることからはじまって、読み書きに至るまでじつに多くの時間をわたしたちは日本語の勉強に費やしてきたのです。たとえば、小学生の頃にやった、あの辛くて退屈な漢字練習や、面倒くさいながらも仕方なくやった音読訓練を思いだしてください。間違いなく、わたしたちは長時間、いや長期間に及んで学習することで日本語を身につけたのです。 英語学習もこれと同じです。だから、英語ができない理由など、じつに簡単に説明がつきます。 英語を知るためのじゅうぶんな勉強をしなかったからです。 では、なぜじゅうぶんな勉強をしなかったのでしょうか。 英語を学ぶ「切実な動機」を感じられなかったからです。だから、真剣に勉強しなかったのです(昨今、社会問題化している若者の「学力低下」も、動機の低下がいちばんの原因でしょう。動機づけに成功すれば、学力はおのずと向上するでしょう)。 あっさりいってしまえば、切実な動機さえあれば、外国語なんてものはたいていものにできます。 となると、あとは「どこに自分の目標をおくか」だけが問題になります。 いうまでもありませんが、目標をどこに設定するかで、学習量と学習方法がきまります。 「あいさつ程度の英語ができるようになればいい」というのであれば、短期間の集中トレーニングでなんとかなるでしょう。しかし、「英語でキャリアを積んでいく」とか「英語で身を立てる」となると、かかる時間も覚える量も膨大なものになるでしょう。 あなたはどのような動機と切実さをもって英語と接していくつもりなのでしょうか。そして英語に対してどのような目標を掲げるのでしょうか。 里中哲彦 |
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