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つけもの大学<新装版> |
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装幀 毛利一枝 |
サンカ小説家・三角寛は漬け物の大家である。生前、雑司ヶ谷の自宅に漬け物専用の小屋をつくり、そこで漬け物業に励んでいた。彼の漬け物数は1730余種類に及び、本書では25種類を収めている。レシピにとどまらず、「漬け物は芸術の真髄である」との「漬け物学論」である。 [著者紹介・編集担当者より] 戦前は、朝日新聞の事件記者を経てサンカを主題としてベストセラー作家として名を馳せる。戦後は池袋に人世坐、文芸坐の映画館を創設し、戦後の映画の隆盛につくす。そして文学博士号論文「サンカ社会の研究」で世の中をアッと驚かす。(村) つけもの大学実践教室 うまくいったぜ「白菜の菩提漬」の巻 昭和30〜40年代、自家製というか自家漬けの漬物を食べて育ったせいか、スーパーで売ってるものが口にあわない。ラベル表示にある「調味料」(味の素などの化学調味料である)や酸味料、キトサンをわざとらしく感受してしまうのだろう。 これまで三角寛の『つけもの大学』は読んでいなかったが、この度の復刻版の写真をパラパラながめていると、懐かしいものの臭いがしてきた。扉にある茄子の紫檀漬の色艶がすばらしい。しかし、今は白菜の季節だろう。で、本書の「白菜の菩提漬」を本に書いてあるとおりにやってみよう、と思った。 スーパーで購入した材料は以下のとおり。 伯方の塩1`=308円、白菜2個=500円、ゆず3個=700円、唐辛子パウダー=298円、焼アンモニウムミョウバン60c=118円。米糠=200円位。 あと、古釘が必要だ。コレはスーパーには売ってない。散歩がてら家屋の解体現場をさがし、許可を得て瓦礫の中から拾い集めた。材料はこれで全部揃った。漬け込む容器は、夏場に糠漬けをやってた琺瑯(ほうろう)容器(直径30a、高さ50a)で、ま、いいか、ということに。 陽射しのある休日の午前。白菜を流水でざっと洗った。株のほうに包丁で2aほどの切り込みを6カ所入れる。そこに両手の親指を差し込み、そろそろ引き裂く。漬け込み容器が小さいから、6分割にした。家中のザルを動員し、白菜の内部を上側にして並べ1時間、上下を逆にして1時間、陽に当てて水を切る。その間に、漬汁をつくった。 水、塩、古釘、唐辛子パウダー、ミョウバン、白菜の葉3枚。これをズンドウ鍋で沸騰させた。それぞれの分量は大学本を横目で見ながら、適当に加減した。煮立てた後、弱火で30分。これで菩提汁の出来上がり。ボールにうつして冷やす間に、ゆずを輪切りにし、赤唐辛子を細かく刻んだ。 あとは漬け込むだけ。ボールの底にひとにぎりの糠を撒き、白菜を平らになるように並べ、ゆずと唐辛子、糠、塩の順番で撒き、その上に2段目の白菜を並べる。これを繰り返して、4段で満杯になった。樽の押し蓋のかわりに油ぎりなどに使うクッキングペーパーで覆い、その上に金属製の落とし蓋。その上に漬物石の代用でダンベルを4個置いた。その上から冷ました菩提汁を注ぎ、ボールの蓋をした。 『つけもの大学』には2〜3日後に内部を調べて「本仕舞い」をしろ、と書かれているが、そのまま1週間ほったらかしにした。 それから3週間、わが家の食卓には毎食、ふんだんな白菜漬が並んだ。連れ合いは「土鍋(無印良品製)で炊いたご飯とこの漬物があれば他はなんにも要らない」と言ったものだ。わたしはもう生涯、白菜漬けの買い物をすることはないだろう。そのために、この本にあるような大樽をどこで入手できるのか、思案中である。 日刊ゲンダイ 編集局長 青柳茂男 |
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