装幀 伊藤滋章
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妙木浩之 著
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判型
| 四六判 上製 |
232ページ |
定価
| 2200円+税 |
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『精神分析入門講義』は、フロイトの著作中もっとも有名なものであるだけでなく心理学における基本文献と言える。そこでの「人はなぜ神経症になるのか」という問題提議は1917年の発表から100年たっても色褪せることはない。本書は、フロイトが発見した神経症の新しいかたち「ナルシス的精神障害−自己愛神経症」によって、大きく形を変えていく「自我」のありかたをとらえ直していくことを目指す。フロイトは、第一次大戦で傷ついた兵士を診ていく過程で、自我がナルシシズム(自己愛神経症)に陥り不安定になっていく姿を発見し、それは晩年まで興味の対象であり続けた。著者は、その不安定な自我のあり方を現代のインターネット時代に置き直し、あまりに多様な価値観のなかで翻弄・分断され「寄る辺なき自我」になってしまう姿を見出した。本書のもうひとつのねらいは、「大戦期に生み出された思想」としてフロイトを読み直すことだ。著者はフロイトと同時代に生きたヒトラーをナルシス的神経症と捉えることによってナチの台頭、その後の現代まで続く群集心理でのつながりの危うさというものも指摘していく。
[著者紹介・編集担当者より] 著者の妙木浩之氏は、フロイト研究の専門家として関連書を多く出版しながら現役の精神分析医として日々、診療を続けている。そこでの観察が本企画にリアリティを加えており、文献解釈、歴史解釈的な従来のフロイト論と一線を画すものになっている。
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