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〈反延命〉主義の時代

〈反延命〉主義の時代――安楽死・透析中止・トリアージ

装幀 大森裕二

小松美彦・市野川容孝・堀江宗正 編著
2021年7月27日発売
判型
四六判 並製 304ページ
定価
2200円+税
ISBN978-4-7684-3588-5

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近年の日本では、「延命」という言葉が否定的な意味で使われることが多くなった。「延命」は医学の当為だが、それに異を唱える潮流が〈反延命〉主義として現れ、勢いを増している。社会保障の財源や医療資源の不足、日本人の死生観などを根拠に、「生産性」のない生の価値を否定し、改善の見込みのない苦痛を長く味わわせることの非倫理性を説くなど、その事象はさまざまである。本書では、それらをある程度網羅し、さらに過去から現代に至る歴史的経緯を解明する論考が並んでいる。


【著者紹介・担当編集者より】
小松美彦(こまつ・よしひこ) 
東京大学大学院総合文化研究科客員教授。一九五五年、東京都生まれ。東京大学大学院理学系研究科・科学史科学基礎論博士課程単位取得退学。博士(学術)。東京大学大学院人文社会系研究科教授などを経て現職。専攻は、科学史・科学論、生命倫理学。著書に、『死は共鳴する』(勁草書房)、『脳死・臓器移植の本当の話』(PHP新書)、『生権力の歴史』(青土社)、『【増補決定版】「自己決定権」という罠』(現代書館)、共訳書に、グザヴィエ・ビシャ『生と死の生理学研究』(中川久定・村上陽一郎責任編集『十八世紀叢書Z 生と死』国書刊行会)など。

市野川容孝(いちのかわ・やすたか)
東京大学大学院総合文化研究科教授。一九六四年、東京都生まれ。東京大学大学院社会学研究科単位取得満期退学。修士(社会学)。専攻は、社会学(医療の歴史社会学)。著書に『身体/生命』(岩波書店)、『優生学と人間社会』(共著、講談社現代新書)、『生命倫理』(編著、平凡社)、『社会』(岩波書店)、『人権の再問』(編著、法律文化社)、『対話 共生』(共著、慶應義塾大学出版会)など。

堀江宗正(ほりえ・のりちか)
東京大学大学院人文社会系研究科教授。一九六九年、茨城県生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科単位取得満期退学。博士(文学)。聖心女子大学文学部准教授を経て現職。死生学、宗教学、スピリチュアリティ研究。『歴史のなかの宗教心理学』、『スピリチュアリティのゆくえ』、『ポップ・スピリチュアリティ』、編著に、『現代日本の宗教事情』(以上、岩波書店)、『宗教と社会の戦後史』(東京大学出版会)など。


パンデミックという非常事態のなかで高齢者や慢性疾患者の切り捨てが当然のようにおこなわれた後に、われわれはそもそも〈反延命〉主義が問題だと思えるような感受性を持っているだろうか。こうした非人間的な事態に人間的であろうと抗うことが必要な時代、それが〈反延命〉主義の時代である。(「序章」より)


【目次】

はじめに………小松美彦
第一部 〈反延命〉主義の現在
序章 〈反延命〉主義とは何か…………堀江宗正
第1章 〈反延命〉主義の現在と根源――ドキュメンタリー番組《彼女は安楽死を選んだ》の批判的検討…………小松美彦
第2章 公立福生病院事件の闇…………高草木光一
第3章 安楽死・「無益な治療」論・臓器移植そして「家族に殺させる社会」……………………………………児玉真美
第4章 多としてのトリアージ…………美馬達哉

【鼎談】分ける社会がもたらす命の選別――相模原事件、公立福生病院事件、ナチス安楽死計画
雨宮処凛×市野川容孝×木村英子

第二部 〈反延命〉主義を問う
第5章 歪められた「生命維持治療」――医師としてACP・意思決定支援に思うこと(聞き手・堀江宗正)…………川島孝一郎
第6章 小児科医の問いと希望――共に在る者として、子どものいのちの代弁を考える――……………………笹月桃子
第7章文学で描かれてきた「よい死」――安楽死・尊厳死の拡大、浸透、定着のなかで……………………原朱美
第8章 死ぬ権利を問いなおす──ヨーロッパの動向から…………市野川容孝


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