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web掲示板談話 斎藤美奈子・森達也 第四十八回 |
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件名:済州島4・3事件を見つめて 投稿者:森達也
斎藤美奈子さま 数日前にピースボートから戻りました。今回は世界一周ではなくてショートクルーズ。具体的には、横浜〜佐世保〜済州島〜広島〜横浜というコースでした。 年に一回くらいは船に乗ってゆったりと旅に出たいとの思いは大前提としても、今回のショートクルーズに参加した理由は、済州島で4・3事件をめぐるオプショナルツアーがあると聞いたから。 4・3事件とは何か。現地で行った4・3平和記念館のパンフレット(韓国語と英語と中国語と日本語があった)から以下に抜粋します。
済州4・3事件は、米軍政期に始まり、大韓民国建国以後に至るまで7年余り続いた、韓国現代史の中でも朝鮮戦争に次ぎ、人命被害が深刻で悲劇的な事件である。
これだけではよくわからない。ウィキペディアからも引用します。
済州島四・三事件(さいしゅうとうよんさんじけん)は、1948年4月3日に在朝鮮アメリカ陸軍司令部軍政庁支配下にある南朝鮮(現在の大韓民国)の済州島で起こった島民の蜂起にともない、南朝鮮国防警備隊、韓国軍、韓国警察、朝鮮半島本土の右翼青年団などが1954年9月21日までの期間に引き起こした一連の島民虐殺事件を指す。 韓国政府側は事件に南朝鮮労働党が関与しているとして、政府軍・警察による粛清をおこない、島民の5人に1人にあたる6万人が虐殺された。また、済州島の村々の70%が焼き尽くされた。
日本の植民地支配から解放された1945年以降、朝鮮半島は38度線で南北に二分され、南側の韓国は北朝鮮(中国とソ連)の南進を恐れる米軍の施政下にあった。つまり独立はしたけれど、敗戦国でGHQの占領下にあった日本と、政治の上部構造はほぼ一緒だったということになる(どちらもトップはマッカーサーだ)。 韓国は1948年に初めての総選挙を行うが、このとき「分断が固定化される」として総選挙に反対した勢力などが、北朝鮮(共産主義)の賛同者として迫害され、やがて軍や警察による無差別な虐殺へと拡大する。特に軍や警察への反感が強かった済州島では、その反動としての虐殺がエスカレートし、女性や子供や老人も含めて6万人(10万人との説もある)が虐殺された。 このとき日本に逃げてきた多くの人たちが、そのまま在日一世となる。そういえば僕の友人の在日コリアンも、親や祖父母が済州島から来たという人が多いけれど、その背景にはこの虐殺があったことを今回知った。ほぼ同じ時期に韓国本土では、100万人以上の市民が殺害された保導連盟事件も起きている。 念を押すけれど、これは戦争ではない。だって殺害する側にいるのは自国の軍隊と警察なのだ。その背後には共産勢力を恐れる政治権力。そしてこれを統治するアメリカ。 韓国だけではない。1960年代のインドネシアでは、やはり共産党関係者が100万人近く、軍や民兵などから虐殺されている。 ならば殺される側は常に共産党など左派的な思想を持つ人たちなのか。もちろんそうじゃない。スターリンの大粛清や文化大革命が示すように、構図が逆転した虐殺もいくらでも事例がある。 要するに一定の環境が整う(この場合に「整う」は言葉として変かな)と、人はこれほどに残虐になれるということなのだろう。
そんなことを思いながら日本へと戻りました。新作映画『Fake』の上映は東京では6月4日から。いろいろ思いながら観てくれたら嬉しいです。
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