現代書館

WEBマガジン 16/08/01


web掲示板談話 斎藤美奈子・森達也 第五十三回

件名:都知事選の日に
投稿者:森達也

美奈子さま

 『学校が教えないほんとうの政治の話』、読んだよ。読んでから返信しようと思っていたので少し遅れた。いやそれは半分嘘。前回の美奈子からのメールに、答えあぐねていたことも確かだ。
今日は都知事選の投票日。僕は茨城県民だから投票権はないけれど、もしも東京都民だったら、誰に入れていただろうと考える。
美奈子からメールをもらう少し前、鳥越さんを応援する人から電話が来て、賛同人になってもらえないかと頼まれた。その時点で宇都宮さんは出馬をあきらめたとの情報もあり、僕の名前でよければどうぞと答えていた。
美奈子からすれば、僕も「許しがたい自称リベラル」の一人ということになる。まあでもさ、参院選の結果で、「もうこれ以上は負けられない」と思った人が大勢いたことは確かだと思う。美奈子の主張に対してある意味で「確かにそうだ」と考えたけれど、でも「そうは言ってもやっぱり勝たないと……」とぶつぶつ思っていたことも確か。
とにかく結果は今日明らかになる。
『学校が教えないほんとうの政治の話』を読みながら思ったけれど、美奈子は本当にイデオロギーにとらわれることが嫌いなのだろうな。まあそれは同じ。というか、自分は今、イデオロギーにとらわれていると自覚ある人はあまりいないと思う。でもいつのまにかイデオロギーや党派性にとらわれている。なぜなら人は集団に属したいから。
美奈子の前回のメールはネットでかなり話題になったね。参院選前、僕もネットで話題になった。でもこのときは、話題になったというよりも炎上。そもそもは週刊誌のインタビューなのだけど、「愚かな若者は投票するな!」などとまとめサイトで見出しを変えられて、「こいつは民主主義を否定するのか」と叩かれた。別にいいけど。
見出しはさすがに極端だけど、趣旨はそれほど間違っていない。何も知らず考えないまま投票するくらいなら、棄権したほうがまだマシだと今も思っている。でもなんで「棄権すべき(実際にはそうは言っていない)」が民主主義の否定になるのだろう。
棄権など許さないと硬直するほうが、よほど健全な民主主義からは離れてしまうと思うのだけど。人に言うからダメってこと? ずいぶん閉塞した状況になっちゃったな。
そろそろ夕方。選挙戦の大勢は判明しているのだろうか。もしも東京都民だったら誰に入れていたか。本気で書くけれど、マック赤坂にしていたと思う。これを読んで、鳥越候補の賛同人に名前を載せておきながら無責任だと、また怒る人はいるだろうな。もしもネットで叩かれたら、まったく同感です、と答えておこう。

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