現代書館

WEBマガジン 22/08/29


web掲示板談話 斎藤美奈子・森達也 第130回

件名:「福田村事件」いよいよクランクイン
投稿者:森 達也

美奈子さま

 8月20日からクランクインしました。撮影地はほとんど京都と滋賀。クランクアップの予定は9月20日くらい。つまりほぼ一カ月の旅でもあるわけです。
 僕は15日から撮影準備で京都に先乗りしているので、この間のニュースはほとんどネットで見出しを見るくらいの日々です。旧統一教会と政治との関わりの問題。どうやら本当に強行されるらしい国葬。半年が過ぎたウクライナ情勢。第七波のコロナ(7月末には僕も陽性になりました)はいつ終息するのか。などなど考えなければいけない問題はたくさんあるけれど、今はまったく余裕がない。頭の中は1923年の9月でいっぱい。
 学生のころには映画サークルに所属していて8ミリで戦争映画を撮ったこともあるし、実験的な短編密室劇映画を15年くらい前には撮ったし、テレビのホラー番組の演出を一回だけやったこともあるけれど、これだけ本格的な劇映画、つまり本編は初めて。しかも時代劇。
 これまで僕は、ドキュメンタリーとドラマのあいだに本質的な差異はないなどと言ったり書いたりしてきました。その思いはもちろん今も変わらない。本質的な差異はない。でも本質的ではない要素、例えばプロセスとか制作体制とか、それはまったく違うと実感しています。
 一言にすれば、劇映画はやはりチーム。これまではほぼ単独か、少数で撮ってきたので、その違いは大きい。
 時代劇の上に群像劇。ところが予算は、大手が制作や配給についてくれるような内容ではないので、現場はいつも試合直前のボクサーのように減量でぎりぎりです。手弁当で参加してくれているスタッフやキャストも多い。感謝しかないです。ところが現場では天候だけではなく、予期せぬアクシデントやハプニングは絶対に起きる。そのたびにプロデューサーたちは青ざめている。でも僕の耳には入れないようにしてくれている。これも感謝。とにかく今は、演出に専念します。
 ロケとロケハンの合間に書いています。今回は短くてごめん。

森 達也

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