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web掲示板談話 斎藤美奈子・森達也 第156回 |
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件名:メインストリームメディアと一党独裁 投稿者:森 達也
美奈子さま
自民党の裏金問題、さらには裏金議員への2000万円配布が総選挙の焦点となったきっかけは赤旗のスクープ。 でも共産党の票は伸びなかった。2議席減った。ちょっと複雑です。 裏金問題と併せて今の自民党を揺さぶる統一教会問題は、安倍元首相暗殺の実行犯による供述がきっかけだ。ちなみに最近のもうひとつの大きなニュースであるジャニーズ事務所の性加害問題も、きっかけはイギリスのBBCのドキュメンタリーによる告発で、かつて週刊文春がキャンペーン的に問題提起したときは、後追いするメディアはひとつもなかった。 つまり全部外圧。日本のメインストリームメディアは、この国で最大の政治権力とエンタメにおける最大の権力に対して、監視機能をまったく発揮できていない。 記者クラブに加盟できない(あるいはする気もない)週刊文春や赤旗は記事を書けるが、記者クラブに出入りできるメインストリームメディアはこれを報道するという発想を最後まで持てなかった。すべて外圧によるきっかけだ。もしも外圧がなかったなら、裏金問題と旧統一教会問題とジャニーズ問題は、今も報道されていない可能性が高い。 その帰結として何が起きているのか。自民党の一党独裁だ。1955年の結党から現在に至るまで22回行われた日本の総選挙において、自民党は21回第一党の位置を示している。これまでの歴史で下野は二回。その期間は通算で4年間だけ。残り69年間、自民党はずっと日本の権力中枢に位置している。 さらに、自由民主党の結党は確かに1955年だが、吉田茂率いる日本自由党と、その自由党からいったんは離脱した鳩山一郎が結成した日本民主党の合同だから(ちなみに岸信介は民主党)、遺伝子はずっと変わっていないと言っていいだろう。 ならばもう80年近く、この国は一党独裁の状態にある。ロシアや中国や北朝鮮ならともかく、普通選挙が実施される民主国家でこんな国が他にあるだろうか。共和党と民主党の勢力が拮抗するアメリカでは政権交代は頻繁に起き、それぞれアウフヘーベンが可能になる。今年だけに限定しても、イギリスにブータン、オーストリアにスリランカ、バングラディシュなどで政権交代が起きている。韓国や台湾なども頻繁だ。80年ほぼ一党独裁。これで民主国家と言えるのか。 政権交代すべきだ。アンチ自民党だからそう主張しているのではない。仮に現在の自民党の位置にリベラルな政党がいたとしても、僕は同じことを言うはずだ。 今回の選挙で自公は敗けた。それは大前提。でもこれまでと同じように、自民党はきっとまたリカバリーする。有権者は自民党に票を入れる。ただし今後、例えば自民党が分派するとか、奇跡的に立民と国民民主と維新が首班指名で結束するなどして政治が流動化するならば、これまでとは違う局面を僕たちは目撃することができる。 でも現実的には無理だろうな。そもそもネガティブ思考が身上。期待はしない。したら絶対に失望する。今はそう思いながら、選挙後の日々を過ごしています。
森 達也
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