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web掲示板談話 斎藤美奈子・森達也 第157回 |
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件名:選挙雑感 投稿者:斎藤美奈子
森 達也さま
12月に突入してしまいました。1年は早いです。 世界的な選挙イヤーだった2024年ですが、予想以上にガッカリな結果ばかりでしたね。
東京都知事選(7月7日)では小池百合子がきっと勝つのだろうとは思っていたけど、蓮舫候補がまさかの3位。衆院選(10月27日)は自公を過半数割れに追い込んだものの、何の高揚感もなく(国民民主の玉木代表がなんだか大きな顔をしているし、裏金&統一教会疑惑の萩生田議員がまんまと当選しているし)、米大統領選(11月5日)は、民主党候補がバイデンからカマラ・ハリスにバトンタッチされた時点でかなり盛り上がりはしたものの、結果は大差での「またトラ」(民主党から共和党に政権が移ったのだから、これはこれで政権交代とはいえますが)。 そして最後は兵庫県知事選。全会一致で不信任決議を突きつけられた斎藤元彦前知事が再選を果たすとは、まさか思っていなかった。 こうした結果に、SNSが勝利して、新聞やテレビなどのオールドメディアが負けたのだ、的な言説も飛び交っていますけど、選挙結果は選挙戦の方法論だけで勝てるものでもないと思うので、いっしょに浮き足立つ気にはなれません。 「そもそもネガティブ思考が身上。期待はしない。したら絶対に失望する。今はそう思いながら、選挙後の日々を過ごしている」という貴君の姿勢が正解かもしれないね。
「今回の選挙で自公は敗けた。それは大前提。でもこれまでと同じように、自民党はきっとまたリカバリーする。有権者は自民党に票を入れる。ただし今後、例えば自民党が分派するとか、奇跡的に立民と国民民主と維新が首班指名で結束するなどして政治が流動化するならば、これまでとは違う局面を僕たちは目撃することができる」 ↑前回貴君が書いていた、このような事態を私たちは、少なくとも過去に2度、経験してはいるのよね。非自民八党連立の細川内閣が成立した1993年と、民主党連立政権ができた2009年に。 ただ、どちらも長くは続かなかった。 細川政権、羽田政権のあとにできた「自社さ」政権は今から思うと中道リベラルに近く(河野談話・村山談話が出たのもこの時)、悪くなかったと思うし、民主党政権も人が言うほど悪くはなかったと思うのだけど、3年で潰れたわけです(何度もいうが潰した野田佳彦は許せない)。 そしてその後が、7年半も続いた安倍晋三の一強時代なわけです。そのあとの菅義偉、岸田文雄まで含めると、10年同じ体制が続いてきたことになる。特定秘密保護法、集団的自衛権の一部行使容認、共謀罪などなどの軍拡路線から原発再稼働政策まで、あるいはモリカケサクラに象徴される政治の私物化、公文書軽視、旧統一教会との癒着などなど、この10年の政治はほんとにひどかった。
その伝でいくと、ろくでもない選挙結果ばかりだったとはいえ、自公の過半数割れと同時に、石破茂が総裁選に勝った(というより高市早苗が負けたというべきか)のは、少しばかりほっとしたというか、プチ政権交代だったとは思うんだよ。日米地位協定の見直しから、選択的夫婦別姓、原発に頼らないエネルギー政策まで、彼は言ってたわけだから。 森君はたとえ野田でも政権交代をしたほうがよい、という意見だったけれど(小沢一郎もその路線だよね)、じゃあ立憲が維新や国民民主と共闘して政権交代してたらどうなったか。たぶんあっという間に潰れただろうし、そもそも維新も国民民主も自民党とたいして変わらないわけだから、形ばかりの政権交代で、政治の中身が大きく変わったともまったく思えない。 石破政権にしても、メディアは「箸の上げ下ろし」みたいなことまで取り上げて、早くもバッシングしまくりじゃない? 旧民主党の鳩山由紀夫政権の時もそうだったしね。鳩山の「最低でも県外」発言を叩きまくりだった。育てようとしないんだよね、あたらしい(かもしれない)路線を。 こうなると、霞が関はもとより、メディアも、そして有権者も「ずーっと55年体制でいて欲しい」と考えているとしか思えない。あるいは安倍政権みたいな強権型が好きなのかもしれない。 普天間基地の移転にしても地位協定の見直しにしても、「できっこない」から発想するから、何も先に進まないわけでさ。こういうことをくり返している限り、(たとえ政権交代ができたとしても)政治が大きく動くことはありえない。
現下の政治組織で、政党としての組織力を備えている、つまり全選挙区に候補者を立てることができるのは、自民党と共産党だけじゃない?(その点、ほかの党は政党とはいえない)。 となると共産党がなぜ伸び悩んでいるのかについても熟考が必要だよね。組織内の民主化というか体質改善が必要なんじゃないかと私は思う。地殻変動は野党の再編から、じゃないのかな。
斎藤美奈子
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