現代書館

WEBマガジン 09/12/08


第八回 事業仕分け→基地移転

斎藤美奈子

森達也さま

 新政権の話は、そろそろもういいかなと思っていますが、もっかの焦点は、事業仕分けと普天間基地の移転問題ですね。

 事業仕分けで、官僚たちがたじたじにやり込められているのはおもしろいですが、なんとなく目くらましのような気がしないでもありません。「一億総会計係化」と私は呼んでいますが、小泉改革以来、この国の国民は出費をケチることが最大の政治課題だと考える癖がついてしまった。みんな異常な緊縮財政好き。ムダの排除が何より大事だと思ってる。

 その志向性に事業仕分けはたいへん合ったやり方で、パフォーマンスとしてはおもしろい。教育関係者がこぞって問題視していた「心のノート」がやり玉にあがっているのを見たりすると、胸がすく思いがします。くっだらない事業がいかに多いか、改めて知らさせたりもしました。
 
 しかし、あのやり方は公開の魔女裁判的ではあり、その結果、削減できたのが1兆円にも満たないとなると、財務省の人たちが裏で舌を出しているような気もしますよね。

 あの12人の「仕分け人」て、どういう人たちなんだろう。あんたにそんな権限があるのか、とも思う。自治体の仕分けはオンブズマン制度に基づく市民参加で行われているわけですが、いまやってる国家予算の仕分け人は、どうやって選ばれたのかも不明。亀井静香が「国民新党と社民党の議員をいれろ」というのも当然でしょう。


 もうひとつの基地問題に関しては、県外移転、国外移転の是非をめぐって、岡田外相と北沢防衛相はすでに腰砕け気味。「県外移設は事実上考えられない」とかいいだしている。鳩山首相だけは、まだ粘って見直すといっていて、それをメディアは「閣内のブレ」と報道しています。

 でも、問題は「ブレ」ではなくて、沖縄の基地をどうするか、ひいては米国との関係をどう構築しなおすかという、もっと大きな問題です。

 これでもし、ゲーツの脅しやオバマの口車にのって、辺野古への基地移転が決まったら、私はてのひらを返して「反連立政権」にまわるよ。

 民主党に投票した沖縄の有権者はもちろん、そういう人は多いんじゃないだろうか。仲井真沖縄県知事が「県内移設もやむをえない」といっているのも問題。石破の「危機管理上問題だ」発言や、松沢神奈川県の「辺野古移設しか解決策はない」発言なんかはほっとくとしても、見直し派の鳩山首相がこのまま孤立したら、ぜったい将来に禍根をのこす。

 同じ映像でも編集や文脈の作り方でこれほどに印象が変わる。政権が変わった今ではなく当時こそメディア(特にNHK)は、こうした政権批判をやるべきだった。

 私もこの番組は見ました。おっしゃる通りですが、逆にあれは政権が変わったからこそつくれた番組、でしょうね。日本のメディアは、政府の生殺与奪の権限を握られてるからねえ。

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