現代書館

WEBマガジン 10/03/23


第十二回 海洋生物をめぐる日本包囲網

斎藤美奈子

森達也さま

 爬虫類について書こうかとも思っていたのですが、爬虫類は好きすぎて(笑)わざわざああだこうだと書く気にならないことに気がつきました。何か質問していただければ、答えることはできるかと思いますが、ほんとに好きだと、話したり書いたりするのが、かえって難しいんだね。日頃、ベラベラしゃべったり書いたりしていることは、嫌いではないまでも、それほど好きなことではないのかも……と思ったりして。

 さて、ぼやぼやしている間に、クジラ関連のニュースが次々に起こりました。ちょっとズルをして、関連の新聞記事だけ先にクリッピングしておきます。クジラ・マグロ・イルカの三題噺。まとめていうと「海洋生物をめぐる日本包囲網」でしょうか。

(1)反捕鯨団体シー・シェパードの捕鯨船妨害問題
そもそもの発端はこのニュースで↓
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シー・シェパード:メンバー1人が調査捕鯨船に侵入
 水産庁に入った連絡によると、15日午前9時ごろ(日本時間)、南極海で 調査捕鯨をしていた調査船「第2昭南丸」(712トン、小宮博幸船長)に、 反捕鯨団体「シー・シェパード(SS)」のメンバー1人がジェットスキーで 接近し、乗り込んだ。今年度の調査捕鯨で、SSのメンバーが乗り込んで妨害 したのは初めて。
 水産庁によると、乗り込んだのは、先月、同船と衝突し大破したSSの抗議 船「アディ・ギル号」のニュージーランド人の男性船長。衝突事故の損害賠償 として約3億円を求める書簡を第2昭南丸の乗員に手渡したという。SSの男 性船長は乗り込んだ際、右手親指に軽傷を負い第2昭南丸の乗員が手当てし た。第2昭南丸の乗員約20人にけが人はなく、船体にも被害はない。【奥山 智己】
(毎日新聞 2010年2月15日 11時06分)
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その後も次々に妨害(らしき行為)が続き、最新のニュースはこれです↓
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調査捕鯨:シー・シェパード妨害問題 侵入容疑で男逮捕へ
 海保南極海の調査捕鯨船「第2昭南丸」に反捕鯨団体「シー・シェパード(SS)」のメンバーの男が侵入した問題で、海上保安庁が第2昭南丸が日本に帰 国次第、男を艦船への侵入容疑で逮捕する方針を固めたことが海保関係者への 取材で分かった。男は侵入前、酪酸とみられる液体入りの瓶を投げつけたこと も認めているといい、捕鯨船員の体調が悪化したことから同庁は傷害容疑でも 立件する方針。第2昭南丸は予定通り航行すれば12日ごろ東京・ 晴海に入 港。第3管区海上保安本部の東京海上保安部が身柄を拘束し、取り調べる。

 海保や水産庁によると、男は1月6日に第2昭南丸と衝突し大破した抗議船「アディ・ギル」号のニュージーランド人船長。現在は日本の船員法に基づき 第2昭南丸内で身柄が保護されているが、アディ・ギル号への損害賠償を要求 しているという。海保関係者らによると男は日本時間の2月15日午前9時ごろ、水上バイク で第2昭南丸に接近し防護ネットを破って船内に乗り込んだ疑いが持たれている。侵入前の同月11〜12日ごろにも酪酸とみられる液体入りの瓶も投げつけ、瓶が船に当たり、船員の肌がただれるなどしたという。
 艦船侵入罪は住居侵入と同じ刑法130条で定められている。正当な理由な く侵入した場合に適用され、3年以下の懲役か10万円以下の罰金が科せられ る。【石原聖】
(毎日新聞 2010年3月8日 東京朝刊)
……………………………………………………………………… この件については、ちゃんたリサーチしていないので、いまのところ論評はできませんが(というか、前に申し上げたような理由で捕鯨問題に言及する気を私はなくしちゃっているのですが)、「SSって何なの」と思う半面、国内的には、この件がナショナリズムに利用されていきそうなことに懸念をもっています。

(2)大西洋のクロマグロ禁輸問題。
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クロマグロ禁輸、狭まる「日本包囲網」

 欧州連合(EU)の欧州委員会は22日、大西洋・地中海のクロマグロの禁輸を支持するよう加盟27か国に提案した。
取引を継続したい日本は漁業国などへの働きかけを強めているが、3月13日からは、絶滅のおそれのある野生生物の国際取引を規制するワシントン条約 の締約国会議で、大西洋・地中海クロマグロの国際商業取引の禁止案が議論されるなど、「日本包囲網」は狭まりつつある。

◆不信感◆
 ワシントン条約の締約国会議では、EU加盟国すべてが閣僚理事会の決定に従って投票することになっており、27か国すべてが禁輸を支持する可能性が 強まっている。
 これに対し、日本の農林水産省は22日にスペインで始まった「大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)」に佐々木隆博政務官、25日からフランスで開かれる経済協力開発機構(OECD)農相会合に舟山康江政務官を派遣する。各国に「漁業管理はワシントン条約ではなく、(従来通り)ICCATで行うべきだ」との日本の主張を伝え、同調を呼びかける。
 クロマグロの禁輸は2009年10月、モナコが乱獲で数が減っているとしてワシントン条約事務局に提案した。大西洋・地中海でのクロマグロの資源保護は、49の国・地域が加盟するICCATが行ってきた。しかし、ICCATは過去に、輸出国の思惑などから内部の科学委員会が資源保護の観点で勧告 した漁獲量を上回る漁獲枠を設定したこともある。このため、マグロを野生生物として保護すべきだと主張する欧米諸国は不信感を抱いている。(以下略)
(2010年2月24日03時00分 読売新聞)
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 クロマグロが高騰するのは困るなあと思う半面、高級なクロマグロなんかどうせ料亭とかに行くのだろうから私には関係ないや、メバチマグロやキハダマグロがあれば充分だ、と思ったり。
 しかし、前にも申しましたが、クジラはまだしも、マグロが禁輸になったら日本人は相当なショックを受けるのではないでしょうか。
 この件も、マグロは日本の伝統の食文化だというあたりからナショナリズムの方向に限りなく近づいていきそうで、イヤですね。

そして最後はこのニュース。
(3)アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞を「ザ・コーヴ」が受賞。
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 長編ドキュメンタリー賞は、日本のイルカ漁を告発した米映画「ザ・コー ヴ」が受賞。環境保護団体が和歌山県太地町のイルカ漁を隠し撮りした映像を使用した。「高濃度の水銀を含むイルカ肉をクジラ肉として販売している」などと、日本の捕鯨を批判。全米監督組合賞(ドキュメンタリー部門)に選ばれるなど、国際的に話題となっていた。
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 本日の新聞にはこんな記事も……。

 ザ・コーヴ 太地町長「作品には事実誤認がある」
和歌山県太地町のイルカ漁を取り上げた米映画「ザ・コーヴ」の米アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞に、地元や漁関係者からは困惑と反発の声が上がった。同町などは、映画の内容には漁に対する偏見から事実誤認があると主張。すでに今夏の国内配給も決まっているが、公開までには曲折がありそうだ。
「作品には事実誤認がある。正確な内容でないのに受賞したのは驚きだ」。太地町の三軒一高(さんげん・かずたか)町長は戸惑いを隠さない。国内公開については「常識があるところは取りやめてくれるだろう。町として、イルカ漁の正当性を国内外に主張していきたい」。
 漁業法などに基づき、同町のイルカ漁を許可している和歌山県の仁坂吉伸知事も「長いあいだ太地町で行われてきた生活を守る営みを、一方的な価値観や間違った情報で批判するのは紳士の道に反する」と話した。
 無許可で撮影するクルーと漁師らとの間では、撮影段階からトラブルが起きていた。地元は「処理場を盗撮され、許可してないのに顔を撮影された」と怒りが収まらない。同町などでは、映画での「漁協は害獣駆除のために漁を行う」「水銀汚染を隠すためにイルカの肉を鯨肉として販売している」という指摘も、事実と異なるとしている。(以下略)
(朝日新聞 2010年3月8日21時12分)
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 映像を見ていないので本当のところはわかりませんが(見たとしても私に判断できる力量があるとも思いませんが)、これは貴君がいう「ドキュメンタリーは嘘をつく」という切り口で語るのに相応しい題材と考えるべきなのでしょうか。
ドキュメンタリーのブロである貴君のご意見を、ぜひともうかがいたいです(私だけでなく森達也の意見を聞きたい人が日本中にいるだろうと想像します)。
映像を見ていないので……なんておっしゃらず、当面の感想だけでもいいので ぜひお聞かせください。
 クジラの話で思い出しましたが、森君のお父様は海保にお務めだったのではなかったでしたっけ(ちがっていたらごめんなさい)。
新潟市内の学校では、転校生(転勤族)に「お父さまは海保」という子が多く、私の友達にも何人かいました。みんな成績優秀で、いい子ばっかりだったので、印象深いのです。なんて、雑談、失礼いたしました。
 お父様の一日も早いご快癒をお祈りします。なんていうおためごかしの挨拶は聞きたくないだろうなと思いつつ、ほかになんと申し上げたらよいのかわからないので……。ともかくご回復をお祈りしています。

斎藤美奈子


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