現代書館

WEBマガジン 13/08/06


web掲示板談話 斎藤美奈子・森達也 第十二回

件名 :何を見ても憂鬱になる森達也さま

投稿者:斎藤美奈子  2013/07/24


「男」「女」→事件の容疑者などの「悪い人」
「男性」「女性」→事件や事故の被害者などの「ニュートラルな人」
 
 気づいたときには、すでに上の使い分けが定着していたから、少なともメディアは20年くらい前から、この使い分けを不文律としてきたように思います(それとも何か規定があるのかな)。
 たしかにイヤな感じです。逆にいうと、こんどの山口の事件(ですか?)は、失踪中の人物に容疑がかかっているということを、暗に示しているのかもしれません。 

 「ねじれ」についていえば、すでに選挙前から、どの新聞もテレビも「参院選の焦点は衆参のねじれの解消」と報道していました。憲法でも原発でもTPPでも経済格差でも貧困問題でもなく、国会の員数問題を「焦点」とすること自体、おかしな話なんですが、よく考えると「ねじれの解消」は政府与党の視点に立った言い方なんですよね。
 野党の立場からいえば、与党の暴走にできるだけ歯止めをかけたいわけですから、むしろ衆参の「ねじれの維持」こそが「焦点」でしょう。
 このように、中立な表現のつもりでも、じつはバイアスがかかっているケースはいくらでもある。私自身も気をつけなくちゃ、と思います。

 でも〈言葉の使いかた、あるいはニュースのプライオリティ〉は〈どんどん崩れてい〉るんだろうか。それはもうずーっと前からの話で、いまはじめてこうなった、ということでもないような気がするんだけど。私の勘違いでしょうか。昔の報道が「ちゃんとして」いて、最近にになって「どんどん悪くなった」とも思えないんだよね。
 でもまあ、他国のロイヤルベビー誕生に大騒ぎするのは、単にメディアの品性がなくなったということでしょう。こういうのは(やや差別的にいえば)、かつては女性週刊誌の専売特許だった。それがNHKのトップニュースになってしまうわけだから。これも一種の「ポピュリズム」という解釈でいいでしょうか。
 私は明日から、九州に出張です。なんだか暑そう。おもしろいことがあったら、また報告します。




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