現代書館

WEBマガジン 17/12/08


web掲示板談話 斎藤美奈子・森達也 第七十四回

件名:ツイッター始めました
投稿者:森 達也

ツイッターを始めてから一カ月が過ぎた。現状の率直な感想を言えば、予想していた以上に面白い。そもそもスマホも持っていないし、知識やスペック的に無理だろうと思っていたけれど、今のところは仕事場のノートPCを使いながら、手探りで何とかなっている。そういえば美奈子さんはやってないね。現代書館のツイッターはある。アイコンは菊地さんの似顔絵。

しばらく続けるつもりでいるけれど、ずっと続けるかどうかわからない。予想以上に面白いことは確かだけど、少し飽きてきたことも事実。

僕がフォローする人の多くは、当然ながら思想信条や主義主張が近い人。そんな人たちのつぶやきが、タイムライン(という語彙でいいのかな)にひっきりなしに提示される。そのほとんどに同意できる。それはそうだ。近い人を選んだのだから。
だからあらためて、これは分断が加速するわけだ、と実感した。だって僕と思想信条がまったく遠い人は、やはり自分と思想信条が近い人たちをフォローしている。ならばタイムラインは、テレビや新聞など既成メディアのほとんどは日本国民に左翼思想のプロパガンダを行っているとか、北朝鮮に対してはすぐにでも敵基地攻撃すべきだとか、沖縄の基地反対運動をやっている人たちの多くは中国からの工作員だとか、韓国人や中国人たちは徹底したエゴイストで気を抜くと侵略されるなどの情報ばかりになる。
ネットやSNSにあらゆる情報が網羅されていることは事実だけど、そのすべての情報を観たり読んだりすることは不可能だ。結局はフィルターが必要になる。そしてどんなフィルターを使うかで、自分を視座に置いた世界はまったく変わる。

特にツイッターの場合はほとんどが匿名なので、文章が攻撃的になる。
この一カ月で炎上っぽいことは何度かあったけれど、いわゆるネトウヨ的な人たちの文章は、攻撃というよりも冷笑のニュアンスのほうが強い。人を見下す。つまりシニシズム。何なんだろあれ。もちろんネトウヨに対峙する側(とりあえずリベラルと呼ぶけれど)にも攻撃的だったり冷笑的だったりする人はいるとは思うけれど、数にすれば圧倒的にネトウヨ的な人たちの冷笑や嘲笑のニュアンスは強いような気がする。
たぶんこのあたりを心理学的、あるいは社会学的に考察したら、いろいろ興味深い傾向が現れると思う。
ネトウヨとの通称ではあるけれど、語源となった「ネット右翼」を文字どおり解釈すれば、ネットを主なフィールドに右翼的な政治活動をする人、とうことになる。
この場合の右翼とは何か。国粋主義。革新思想の反意語。国体主義。視点はいろいろあるけれど、今のネトウヨたちの多くは、少なくともナショナリスト(愛国主義者)ではないと思う。だって愛国主義ならば、これほど日本を属国扱いするアメリカに対して怒るべきだ。アメリカには従属しながら中国や韓国に対しては眼の色を変えて罵倒する。ならばそれはナショナリズムではなくてレイシズムだ。まあこのあたりは、戦後レジームからの脱却を謳いながら戦後占領体制をより強化するかのようにアメリカへの忠誠度を強める今の政権と歩幅は同じなのかもしれない。
とにかくもう少しツイッターを続けます。いろいろ発見があった。なるほどと腑に落ちることもたくさんあった。いつまで続けるかはわからないけれど。

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